ロロノア家の人々〜外伝 “月と太陽”

  “星の祭りの”


       



 陸地よりもうんと広い広い海の内の、赤道直下ほぼぐるりと一周を、その特別な航路として区別されている海域がある。どこまでも果てがないお空の高みと同じようなもので、海だって足場のない不安定な場所だから、長い柵を設けたとしたって到底巡らせ切ってしまえるもんじゃなし。誰にも監視のないよな難所だのあろう、どんな危険を賭してでもという覚悟さえあるのなら、どっからか行き来が出来るはずだろと思ってしまうものだけれど。

 そんな単純な話なら、
 とある海賊王がお宝を遺したと宣言するまでもなく、
 もっとずっと開けていただろうし、
 今でこそ少しずつ均されつつあるそれのように、
 世界中の土地土地同士の交易や交流だって、
 世界政府だの海軍だのをいちいち経由しなくてよかったような、
 もっともっと自在なものにもなってたハズで。

 すなわち、怖いもの知らずな海賊たちでもなけりゃあ闊歩出来ない、そんな海域だったのだ、昔の“グランド・ライン”という場所は。

 「まあ…今だって、
  そう簡単には航海出来ない、
  自然的 若しくは人為的に険しい海域や、
  未開の海域も たんと残っているんだしね。」

 まだまだ全ての隅々までを網羅されているワケではない、それほどの広さと奥深さから、恐れられ続けてもいる航路であるには違いなく。やっぱり羅針盤は効かないし、海域の居並びようも目茶苦茶で、真夏の隣りに さして距離も置かずに、極寒の海域が並んでいたりもするし…と。そういう破天荒さは相変わらず。かつてに比べれば多少は解明された勝手が何とか多い航路のみ、その事情を前以て広められているので、それを踏まえた準備に怠りさえなければ、外海と同じほどという危険度へ軽減されるというだけのこと。

 それと……

「どうしてなのか…という説明はされぬまま、
 そっち行っちゃ危ないぞと、入り込むのを禁じられてる海域もあるよな。」
「冒険家には逆効果だよね、その脅し。」
「脅しって…。」

 なあと いかにも楽しそうに相槌を打ち合う男衆たちへ、

「あんたたちいつから“冒険家”になったわけ?」
「あれ? 気づいてなかったのかい?ベル。」

 海軍基地のある島や海域の港では、入港許可証にいつもそう書いてるじゃないか。海洋学習の一端としてあちこち回って見聞を広めている一行ですって。嘘ついてるようで何だかなぁってゴネてた船長を、フレイアが

 『信条に瑕するとか、誰かを手ひどく騙して傷つけるってもんじゃなし、
  こ〜んな可愛い嘘の1つも突き通せなくて何が海賊なのかなぁ?』

 って丸め込んで以来、ずっとだよ、ずっと。けろりと告げた黒髪の航海士さんへ、

 「……そうじゃなくってっ。」

 今の言い方だと、本心から“冒険家へ鞍替えしました”って言わんばかりだったから、と。そういう意味でしょうが…っと 怒鳴りつつ。腹立ち紛れだろう、手元にあった空っぽのジョウロを投げたベルちゃんだったのへ、

 「おっと。」
 「おやおや。」

 ひょいひょいと避けたのが、話を聞いてた衣音くんとフレイアさんで、

 「……ってぇえ〜っ☆」

 いきなり何すんだ、ベル。
 何よ、あんたが元凶みたいなもんなんだからね、あたし謝らないもん。
 何だと、ワケ判るように言え。
 やなこった。

 あっかんべと、絵に描いたような憎まれのポーズを決めて駆け出した、まだまだ少女という年頃、愛らしい鑑定士さんを追っかけて。

 「待ちやがれっ!」

 まとまりの悪い、しかも緑という珍しい髪、風にぽさぽさなぶらせて。あれでも一応はこの船の船長さんが、甲板をどたばたと駆け出した、相変わらずな航海模様の彼らであるようです。





       ◇◇◇



 お久し振りの彼らでございます。皆様、覚えておいででございましょうか。

 彼らにしてみりゃ昔むかし、世間様からすりゃ、ほんの10年とちょっとほど前のこと。お年寄りほどつい最近の英雄譚、まだまだ鮮やかに思い出せるほどのつい先年の出来事として。この世界最恐の航路を、それは鮮烈な印象残し、暴れ回った海賊王がおりまして。暴れたと言っても、非道の限りを尽くして人々から悪魔と恐れられた…とかいう類いの、人で無しな恐ろしい海賊じゃあない。
海軍の偏った報道により、実際の彼らを知らない人にはそんな印象もあったかもしれないが、それは単に、海軍が“負けた”ことをそのまま広める訳には行かなかったからであり。何か卑怯なことをしてそれで、海軍も手出しへの制限があってのこと、みすみす彼らを取り逃がしてしまったのであって。なのでというこの高額な賞金なのであり、どうかくれぐれも“危険な彼ら”に無謀な手出しはせぬよう。また、生死は問わぬので、どうしても身の危険を感じたならば、手段を選ばず退治してもいいですよ、傷害罪や殺人に問いはしませんよと、そんな格好での手配書をばらまいたという例も結構あったというから、大声で叫ばれ、主張されてる正義ほど、問題大ありなのは、いかがなものか。

  ……話が逸れましたな。すいません。

 一番最初にこの“グランドライン”を制覇した海賊王、ゴール・D・ロジャーがその処刑の際に言い残したのが、

 『俺が見つけたひとつなぎの秘宝“ワンピース”を
  グランドラインのどこかへ隠した』

 という一言であり。探した奴にくれてやる、だからせいぜい頑張りなというよな煽り文句に乗せられて、猫もシャクシも海へと漕ぎ出したのが、かれこれ40年ほど前になるだろか。そんなお墨付きの大秘宝を、見事手にしたのが、ルーキーもルーキー、海へ出てから1年経つか経たぬかというほどもの、しかも十代の少年を船長にいただく、とんでもない海賊団。

 それが、
 人呼んで“モンキー・D・ルフィが率いる麦ワラ海賊団”であり。

 とはいえ、彼らは…そこへと至るまでの活躍こそにぎやかだったその割に、実にそそくさと、姿も名前も足跡も、海の世界から消してしまった。覇王として君臨するとか、海軍や恐持ての他の海賊団と睨み合うことで、海における力の均衡を保つ…なんてなつもりまではなかったか。あっと言う間にのし上がったのと同じほどのあっと言う間に、その行方を晦ましてしまい。そのどさくさと同じほど、ワンピースというのがどんな秘宝だったかも、あんまり広く広められてはないもんだから。もしかしたらその秘宝ってのは呪わてたんじゃなかろうか。海軍がばら撒き直した手配書にも、その旨が罪状として加算されてるほどだから、口から出まかせに見つけたと言った訳ではないだろう。となると、だ。あのロジャーだって、その秘宝を見つけて程なく海軍に捕まってしまった。かかわったら最後、滅びを招くような呪いがかかってたんかもしれないぞと、そんな話がまことしやかに広まりもしたのだそうで。

 そうこうするうち、月日は流れ。

 人の噂も何とやら、ほんの10何年しか経ってはないその海賊王たちの冒険譚が、伝説という古書の中で語られるレベルの昔話になりかけている海へ、さあ行くぞと、昔日のルフィらを思わすノリで、漕ぎ出して来たのが、こちら様の小さなお船。乗組員も似たような顔触れと言いますか、十代の少年二人に少女が一人。最近加わったのがやっとの大人ではあるが、二十代半ばかなぁという若い世代の人物だというから、はっきり言って無茶もいいとこ。どこの遊覧船が湾外クルーズやってんだと、すれ違った海賊さんたちから せせら笑われたことも数知れずだが、

 『いい子だから身ぐるみ脱いで置いてきな。』
 『ガキをやっても自慢にゃならぬ、
  命ばかりは取りゃしねぇからよ。』

 がははと居丈高になって笑った賊ほど、逆に身ぐるみ剥がしてやったというから末恐ろしい。仕掛けが満載の不思議キャラベルを操って、大人の、しっかと頭数がそろってる船でも難しい航路を、そろそろ新世界だよんというところまで深入して来た奇跡のお船。

  その名も……

  その名も? えっと、あれ?

  「……誇り高き海の勇者ウソップの知恵袋号」
  「おおお、ベル凄いぞ。」
  「大した記憶力っ。」
  「つか、思い出せない名前なら、
   主柱でもすげ替えるついでにつけ替えなさいと
   あれほど言ってるでしょうがっ。」

  「う〜ん。平和だ、平和。」(あっはっは)




to be continued. ( 10.07.10.〜 )


NEXT


 *あああ、しまった、おさらいだけで1段目が終わってしまった。
  続きもすぐ書きますんで、しばしお待ちをッ。

 *それにしても、アニワンがないとさみしい限りで。
  しかもその間に、W杯フィーバーがありの、
  ハガレンが最終回を迎えのしたので、
  すっかりと集中が途切れかけて困った困った。
  (関係ないもんに腹痛ももらったし…。)
  何でもOPがやっと変わるそうですね。
  関西は8月に入ってからか、下手すりゃ9月か?
  海軍との戦争編へ突入なんですね。
  シリアスな展開ほど、引き伸ばされると辛いんだがなぁ…。


ご感想などはこちらへvv

 
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